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脳への転移とサイバーナイフ治療|定位放射線による新たな治療の選択

はじめに

2025年春、父の肺がん治療は次の段階に入った。

分子標的薬免疫療法抗がん剤と治療を進めてきたが、新たに脳への転移が見つかった。

がんとわかった際の心境やこれからの心構え、その後の治療方針は以下それぞれの記事にまとめている。

その一報を受けたとき、僕たち家族の中に走ったのは、恐怖というよりも、「ついに、ここまで来たか」という静かな衝撃だった。

肺から骨、リンパ、胸水、そして脳へ——

がんが徐々にその領域を広げていく中で、家族としてできることは多くない。

ただ、治療法がある限り、本人の意志を支えることが今の僕たちの役目だと思っている。

この記事では、父の脳転移に対して行われる「定位放射線治療(サイバーナイフ)」について、家族の視点からその経緯と内容、そして感情を記録として残しておきたい。

  • サイバーナイフ(CyberKnife)とは、体にメスを入れることなく、がん病変に対して極めて精密な放射線を当てて治療する装置のことである。
  • ロボットアームを用いた装置により、患者の体の微妙な動き(呼吸など)にも対応しながら、ミリ単位の精度で腫瘍に照射を行うことができるのが最大の特徴となっている。
  • 脳腫瘍のように繊細な部位においても、正常な組織を極力傷つけずに照射ができるため、副作用が少なく、患者への負担が大きく軽減される
  • この治療は、基本的には保険適用で受けることができる。
  • 1回あたりの治療費は、3割負担で15〜20万円程度だが、高額療養費制度を活用すれば実際の自己負担額は数万円以内に収まることが多い

脳転移、複数箇所に広がる病変

父の脳への転移は、MRI検査によって発覚した。

転移しているのは1〜2個ではなく、複数箇所に病変が広がっている状態だった。

担当医からは、「脳転移の治療には定位放射線治療が有効です」と説明があった。

しかし、仮に病変があまりにも多すぎる場合、定位放射線治療では対応できずに、脳全体に放射線を当てる全脳照射という選択肢も出てくるという。

全脳照射は効果が期待できる一方で、認知機能の低下などの副作用が出る可能性が高いことから、できることなら避けたいと多くの患者が考えると聞いた。

定位放射線治療専門医の話を聞くところによると父の場合は、数は多いが「まだ定位放射線で対応可能」との判断が下され、家族としてはその選択肢が残っていたことにほっとした。

治療は別の専門病院で

ただし、現在父が入院している大学病院では、この高度な放射線治療に対応できる設備が整っていなかった。

そのため、放射線治療専門の別の病院を紹介されることになった。

紹介された病院は、実家からもほど近く、建物も新しく清潔感が漂っていた。

病院内に一歩足を踏み入れた瞬間、まるで最新の医療センターのような雰囲気に、家族一同驚いた。

設備もスタッフの動きも洗練されており、まさに「最新鋭の医療施設が揃った一流病院」という印象だった。

サイバーナイフ治療が決定

この病院で改めて造影剤を追加してMRIを撮影し、治療方針が正式に決まった。

脳内の転移は5箇所以上に広がっており、これらを1回で治療するのは難しいため、1日2箇所ずつ、数日に分けてサイバーナイフによる治療を行うというスケジュールとなった。

いろいろ調べていく中でわかったのだが、父の治療を担当してくれる医師の方は、日本でも数少ないサイバーナイフ専門医の一人で機械の開発にも関わっているサイバーナイフ界の権威であることがわかった。

各地から患者が訪れ、その技術と実績には高い評価が集まっているそうだ。

父の治療がそうした医師の手に委ねられるというのは、何よりの安心材料だった。

抗がん剤治療との並行と再検討

父は現在、カルボプラチン+ペメトレキセドによる抗がん剤治療を受けているが、現在この抗がん剤が白血球を大幅に減らしてしまう副作用が出ている。

医師からは、「このままでは抗がん剤の継続が難しい可能性がある」と説明を受け、薬剤の種類や投与量について再検討が必要になってきている

サイバーナイフ治療と抗がん剤治療を並行して行うということは、体にとっても非常に負担がかかる。

副作用に耐えながら、複数の治療を同時にこなす父の姿を見ていると、本当に頭が下がる思いしかない。

家族として、今できること

脳に転移しています」という言葉を聞いたとき、母は一瞬固まり、妹は涙を堪えていた。

僕も、声を出すことができなかった。

だが、すぐに「治療法があります」という医師の言葉に、僕たちは救われた。

恐怖の中にも、希望がある。そのことが、家族の支えになる。

父は淡々としている。決して多くを語ることはないが、前を向いて検査を受け、治療の日程を受け入れている。

その姿を見ていると、こちらも「弱音を吐いてはいられない」と自然と思える。

おわりに

治療法があるということは、本当にありがたい。

最新の医療にアクセスできる環境、専門性の高い医師、そして支えてくれる家族や医療スタッフの存在。

父のがんは、決して簡単な相手ではない。

それでも、一つひとつできることを積み重ねていくことで、「今の生活」を少しでも守ることができればと願っている。

サイバーナイフによる治療が、父にとって少しでも前向きな結果につながることを信じている。

また、今後の経過や副作用、在宅療養の様子なども記録として残していきたいと思う。

   

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