父の病状について、久しぶりに現在の状況を記録しておこうと思う。

2023年に肺がんステージ4と診断されてから、もう随分長い時間が経った。

分子標的薬、免疫療法、抗がん剤治療。

その途中で起きた脳梗塞、脳への転移、そしてサイバーナイフ治療。

振り返れば、この数年間だけでも本当にいろいろなことがあった。

これまでの父の治療や家族として感じてきたことについては、「父との闘病を振り返って、今を見つめる」にもまとめている。

そして現在。

驚くことに、検査上では肺の原発巣は確認できなくなり、これまで確認されていた転移についても、現時点では見られなくなっている。

2023年に「肺がんステージ4」と告げられた日のことを考えれば、これは間違いなく大きな前進だ。

あれだけ「がん」という言葉に振り回されてきた僕たち家族にとって、ここまで治療が効いてくれたことは本当にありがたい。

ただ、父が元気になって以前の生活に戻れたのかと言えば、決してそうではない。

がんそのものとは別のところで、身体がなかなか回復してくれない。

今の父は、そんな状態にある。

第1章|肺に水が溜まり、呼吸が浅くなった

少し前から、父の肺の周囲に水が溜まる状態が続いていた。

いわゆる「胸水」である。

胸水とは、肺そのものの中ではなく、肺の外側にある胸腔に液体が溜まった状態のことをいう。

国立がん研究センターの「がん情報サービス」でも胸水について解説されており、量が多くなると肺が圧迫され、息苦しさなどが現れることがある。

まさに父もそんな状態だった。

胸水が増えてくるにつれて、父の呼吸は明らかに浅くなっていった。

少し身体を動かしただけでも息苦しい。

以前なら何でもなかった距離を歩くだけでも疲れてしまう。

がんそのものは画像上では見えなくなってきている。

それなのに、身体は以前のようには動いてくれない。

父を見ていると、「病気が良くなる」というのは、決して一つの検査結果だけでは語れないのだと改めて感じる。

第2章|胸水だけでなく、全身のむくみもひどくなった

さらに目立つようになったのが、全身のむくみだった。

胸水が溜まる状態と並行して、身体全体にも強く水分が溜まるようになり、特に足を中心にかなり強いむくみが出るようになった。

見た目にも明らかに分かるほどだった。

これまで父の身体については、

・痩せていないか
・食事は取れているか
・体重は維持できているか

ということを気にしてきた。

ところが今は、単純に体重だけを見ても身体の状態が分からない。

身体に溜まった水分によって、体重自体も大きく左右されるからだ。

なお、胸水やむくみにはさまざまな原因があり、胸水がそのまま全身に「回っている」という単純な話ではない。

日本呼吸器学会の胸水に関する解説を見ても、胸水は腫瘍だけでなく心臓や腎臓などさまざまな状態と関連して起こることが説明されている。

そのため、この記事ではあくまで、

「胸水が続くのと同じ時期に、父の全身にもひどいむくみが出ている」

という実際の状態として記録しておきたい。

食欲がある。

がんが画像上では見えない。

それだけを切り取れば、とても良い状態に思える。

けれど実際の父は、呼吸の浅さや全身のむくみに苦しみ、以前のような日常生活を送ることが難しくなっていた。

第3章|胸水を抜いても、また溜まる

胸水については、これまでも何度か水を抜く処置が行われてきた。

水を抜けば、一時的には楽になる。

肺を圧迫していたものが減ることで、呼吸も少し改善する。

ただ、しばらくするとまた水が溜まってくる。

そして、また抜く。

溜まる → 抜く → また溜まる。

この繰り返しが続いていた。

胸水が多い場合に管を入れて排液する「胸腔ドレナージ」については、国立がん研究センターの肺がん治療に関する解説にも掲載されている。

もちろん父に行われている処置が、すべてそこで説明されている治療と同じという意味ではない。

ただ家族からすると、

「水が溜まるから抜く」

という治療を何度も繰り返しているように見えていた。

家族として見ていて辛かったのは、処置をすれば一度は良くなるものの、それが根本的な解決にはならなかったことだ。

父自身も当然それを分かっている。

息苦しそうな父を見ていると、身体的な負担だけでなく、精神的にも消耗していたのではないかと思う。

そこで今回、何度も胸水を抜くだけではなく、もう一段踏み込んだ治療を行うことになった。

第4章|胸水を区切る「壁」を処置する手術へ

今回、家族として医師から受けた説明を簡単に表現すると、

胸の中で水を区切ってしまっている「壁」のような部分を処置し、水がきちんと排出される状態を作るための手術

だった。

胸水は必ずしも一つの空間に均一に溜まるわけではなく、胸の中で癒着や隔壁のようなものによって区切られてしまうことがある。

父について僕たち家族が受けた説明では、その「壁」のようになっている部分があることで、溜まった水を十分に抜ききることが難しくなっていたようだった。

そのため今回は、単純に「溜まった水を抜く」という処置を繰り返すだけではなく、胸の中で水の排出を妨げている部分そのものに対して処置を行うことになった。

これまで繰り返してきた「溜まる → 抜く → また溜まる」という状態から抜け出すための、より根本的な治療だったと家族としては理解している。

ただし、正式な術式名については僕自身がまだ正確に把握できていない。

胸水に対する治療にはさまざまな方法があり、国立がん研究センターでも胸腔ドレナージや胸膜癒着術などが紹介されているが、今回父が受けた手術が具体的にどの術式に当たるのかについては、ここでは断定しないことにする。

父にとっては、また一つ大きな治療になった。

※この部分は家族が医師から受けた説明をもとに記載しています。治療方法や正式な術式名を医学的に断定するものではありません。

第5章|手術後、今度は肺に穴が開いている

手術が終われば、そのまま順調に回復していく。

当然、家族としてはそうなってほしかった。

しかし、また別の問題が起きている。

現在、父の肺には穴が開いており、そこから空気が漏れる状態が続いている。

そのため今は、胸水そのものへの治療だけではなく、肺の穴が塞がり、肺がきちんと機能できる状態に戻るための治療が続いている。

ただし、父の現在の状態について正式にどのような診断名が付いているのかは、この記事では断定しない。

今はただ、肺からの空気漏れが治まり、穴が塞がってくれることを待っている状態だ。

一つ良くなれば、また一つ。

この数年間、何度この感覚を味わっただろうと思う。

がんを抑えることができても、脳梗塞が起きた。

脳への転移が分かったときには、サイバーナイフによる定位放射線治療を受けた。

その治療を乗り越え、現在は転移も見られなくなった。

それでも、今度は胸水と肺の問題が出てきた。

本当に、身体というものは複雑だ。

第6章|右手はいまも自由には動かない

そして、以前の記事から書いている右手の状態についても、大きくは変わっていない。

脳梗塞によって動かなくなった右手は、今も自由に使える状態には戻っていない。

父が脳梗塞を発症した当時のことは、「父が脳梗塞を発症|肺がんステージ4治療中に起きた新たな試練」に記録している。

そして脳梗塞から1年が経った時点での身体の状態についても、「脳梗塞から1年が経って思うこと」にまとめた。

会話はできる。

意識もしっかりしている。

父は父のままだ。

だからこそ、

「頭では分かっているのに、身体がついてこない」

という状況は、本人にとって相当もどかしいのだと思う。

以前なら何でもなくできていたことが、一つ一つ難しくなる。

・服を着る
・物を持つ
・身体を支える
・歩く

人間の日常というのは、無数の小さな身体動作によって成り立っている。

健康なときには意識することすらなかった。

父の姿を見ていると、その当たり前が決して当たり前ではないことを何度も思い知らされる。

第7章|「がんが消えた」と「元気になった」は同じではない

今回、一番記録しておきたかったのはここかもしれない。

現在、検査上では肺の原発巣は確認できず、これまで確認されていた転移についても見られていない。

2023年にステージ4と診断されたときのことを考えれば、本当に信じられないところまで来たと思う。

当時は、

「あとどれくらい一緒にいられるのだろう」

ということばかり考えていた。

そこから何度も治療を乗り越えて、今ここまで来ることができた。

それ自体は、間違いなく喜ぶべきことだ。

一方で、

がんが見えなくなった=以前の身体に戻る、ではなかった。

脳梗塞の後遺症。

右手の麻痺。

胸水。

全身のむくみ。

浅い呼吸。

そして現在治療している肺の穴。

がんという大きな敵が少しずつ姿を消していく一方で、その戦いの中で父の身体にはいくつもの傷が残っている。

がんという意味では、父の身体は確実にクリーンな状態に近づいている。それでも日常生活という意味では、まだ長い回復の途中にいる。

病気というのは、本当に単純ではない。

第8章|今は、一つずつ治していくしかない

以前なら、検査のたびに僕が一番気にしていたのは、

・がんは大きくなっていないか
・新しい転移はないか

ということだった。

今は、その質問が少し変わった。

・呼吸は楽になったか
・むくみは少し引いたか
・肺の穴は塞がってきたか
・今日は昨日より身体を動かせたか

そんな、一見すると小さな変化を気にするようになった。

でも今の父にとっては、その一つ一つがとても大きい。

まずは肺がきちんと治ること。

呼吸が少しでも楽になること。

身体のむくみが減ること。

そして少しずつでも、以前の日常生活を取り戻していくこと。

今は、それだけでいいと思っている。

ここまで何度も想定外のことが起きてきた。

それでも父は、そのたびに治療を受け、また次へ進んできた。

今回もまた、一つずつだ。

第9章|「治る」という言葉の意味が変わった

父が肺がんステージ4と診断された頃、僕にとって「治る」という言葉は、

がんがなくなること

だった。

今は少し違う。

がんがなくなることはもちろん大切だ。

でも同じくらい、

普通に息ができること。
自分の手で物を持てること。
自分の足で歩けること。

家でご飯を食べられること。

家族といつもの会話ができること。

そんな当たり前の日常を取り戻すことも、「治る」ということなのだと思う。

がんについては、ここまで本当によく治療が効いてくれた。

だから今は、その次の段階。

父の身体が少しずつ回復して、もう一度穏やかな日常に戻ってくれることを願っている。

まだ治療は続いている。

また状況が変わったら、このブログに記録していこうと思う。