はじめに

住宅ローンの繰上げ返済は、誰でも一度は悩むテーマだと思う。

少しでも早く返せば安心できる。

利息負担も減る。

でもその一方で、手元資金は減るし、投資に回せるお金も減る。

子どもがいる家庭なら、教育費のことも無視できない。

僕自身、このテーマはずっと頭の片隅にあった。

そして昨年、ひとつ大きな節目が来た。

10年間の住宅ローン控除が終わったのである

毎年年末にあった還付がなくなり、気持ちの上でも「いよいよ住宅ローンそのものと向き合う時期に入ったな」と感じるようになった。

しかも今は、長期金利・短期金利の両方が上がりつつあり、住宅ローンを取り巻く環境そのものが10年前とは違ってきている。

とはいえ、僕は10年前に固定金利を選んで借りた

そのため、世の中の金利上昇がそのまま毎月返済額に直撃する立場ではない。

それでも、住宅ローン控除が終わるタイミングで、繰上げ返済はかなり慎重に考えた。

そのうえで今の結論はシンプルだ。

今は繰上げ返済をしない。ただし、将来の選択肢としては明確に持っておく。

今日は、長期金利・短期金利が上がる今の住宅ローン環境を踏まえながら、僕が繰上げ返済をどう考えているのかを書いておきたい。

住宅ローン金利はなぜ上がるのか。まずは仕組みを理解しておく

住宅ローン金利が上がる仕組みは、ざっくり言えば変動金利は短期金利、固定金利は長期金利の影響を受けると考えるとわかりやすい。

変動金利は「短期金利」に連動しやすい

変動金利型の住宅ローンは、多くの場合、銀行の基準金利や短期プライムレートの動きに影響を受ける。

その背景には、日本銀行の政策金利がある。

つまり、日銀が政策金利を引き上げる流れになると、銀行の調達コストも変わり、結果として変動金利型住宅ローンの基準金利も見直されやすくなる。

ここ数年、「変動金利は低いから安心」と言われ続けてきたが、その前提は少しずつ変わり始めている

ただ、まだまだ低金利。あわてて何かアクションを起こすタイミングでもないと考えている。

固定金利は「長期金利」に連動しやすい

一方で、固定金利は長期金利の影響を受けやすい。

金融機関は長期間にわたって金利を固定して貸し出す以上、その期間の資金コストや市場金利を意識せざるを得ないからだ。

だから、国債利回りなどの長期金利が上がる局面では、新しく借りる固定金利の住宅ローンも上がりやすい

つまり今は、変動にも固定にも上昇圧力がかかる局面にある

住宅ローンの話が以前より現実味を帯びてきているのは、そのためだと思う。

10年前の住宅ローン控除と、今の住宅ローン控除はかなり違う

今回、僕が改めて繰上げ返済を考えた理由は、金利だけではない。

住宅ローン控除が終わったことがかなり大きかった

住宅ローン控除は、借入当初の家計をかなり助けてくれる制度だ。

ただし、この制度は10年前と今とで内容がかなり変わっている。

10年前の住宅ローン控除はシンプルでわかりやすかった

僕が住宅ローンを組んだ頃の住宅ローン控除は、かなりわかりやすかった。

基本的には、年末の住宅ローン残高の1%が10年間控除されるという仕組みだった。

一般住宅であれば、借入限度額や控除上限も比較的大きく、制度として非常にシンプルだった印象がある。

感覚としては、

「住宅ローンを組んでいる間、最初の10年は税制面でかなり下支えしてもらえる」

という安心感があった。

今の住宅ローン控除は、控除率も条件も変わっている

それに対して今の住宅ローン控除は、昔より細かい制度になっている。

控除率は以前より下がり、省エネ性能や住宅の種類によって借入限度額や適用条件も変わる。

控除期間についても、住宅の種類によって扱いが分かれるようになった。

つまり、「住宅ローン控除」という名前は同じでも、中身は10年前とかなり違うのである。

だからこそ、今住宅ローンを組む人と、10年前に住宅ローンを組んだ僕とでは、そもそもの前提条件が異なる。

この違いは、住宅ローンの返済方針を考えるうえでも意外と大きいと思っている。

住宅ローン控除が終わったタイミングで、繰上げ返済を真剣に考えた

10年間の住宅ローン控除が続いている間は、どこかで

「まだ制度の恩恵を受けている」

という感覚があった。

でも、それが昨年で終わった。

今年からは、年末の還付がない。

そうなると、家計の見え方はやはり変わる。

控除が終わったなら、その分、繰上げ返済をした方が合理的ではないか。

この考えは自然なものだと思う。

僕も実際そう考えた。

しかも、今は住宅ローン金利そのものが上がりつつある局面だ。

変動金利で借りている人ほどではないにしても、住宅ローンを取り巻く空気が以前より明らかに変わっている。

だから、僕も住宅ローン控除終了をきっかけに、繰上げ返済をかなり慎重に検討した。

それでも、今は繰上げ返済をしないと決めた理由

結論から言えば、僕は今は繰上げ返済をしないことにした。

理由1:僕は固定金利で借りており、直接的な金利上昇の影響を受けないから

まず大きいのはここだ。

僕は10年前の金利で固定金利を選んだ。

だから、足元で長期金利や短期金利が上がっていても、それがすぐに自分の返済額へ反映されるわけではない。

もちろん、世の中全体の金利が上がること自体は意識する。

ただ、それはあくまで環境変化であって、自分の毎月返済額に直接効いてくる話ではない

この点は、変動金利の人とは前提がかなり違う。

理由2:今の我が家にとって大事なのは、利息削減より家計の柔軟性だから

住宅ローンの繰上げ返済は、数字だけ見れば魅力的だ。

返済期間を短くできるし、利息も減る。

でも、そのためにまとまった現金を住宅ローンへ入れてしまうと、今度は手元資金が薄くなる。

家計にとって本当に怖いのは、返済そのものよりも、いざという時に動けなくなることだと僕は思っている

特に子どもがいる家庭では、教育費の存在が大きい。

これまでの記事で書いてきているように僕の家計は、今、学費、塾代、受験費用、部活、進学に伴う支出を織り込んだ設計で回すようにしている。

これらはじわじわ来るというより、ある時期にまとまって重くなる。

だから僕は、

住宅ローンを少し早く減らすことより、家計の自由度(僕にとっては教育費と投資への猶予)を残すこと

を優先したいと思った。

理由3:繰上げ返済は「やるかどうか」ではなく、「いつやるか」の問題だから

ここが一番大きい。

繰上げ返済の議論は、どうしても

「やるべきか、やらないべきか」

の二択になりがちだ。

でも実際には、そうではないと思っている。

繰上げ返済は良い選択肢である。

ただし、家計にとって適切なタイミングでやることが大事だ。

焦って早く返した結果、教育費や生活費の山で苦しくなるのでは本末転倒だ。

住宅ローンを減らして安心したはずなのに、手元資金が足りずに不安が増えるなら、それは合理的とは言いづらい。

繰上げ返済をしないのではなく、「今はまだ順番ではない」

僕は繰上げ返済そのものを否定しているわけではない。

むしろ、将来的にはやるつもりでいる。

ただ、今ではない。

僕の中では、住宅ローン返済の優先順位は次のようになっている。

  1. 生活防衛資金を確保する
  2. 積立投資の仕組みを崩さない
  3. 教育費のピークに耐えられる状態をつくる
  4. そのうえで余剰資金が十分にあるなら、繰上げ返済を検討する

この順番なら、家計は壊れにくい。

逆に、住宅ローン控除が終わったから、あるいは金利上昇が気になるからという理由だけで順番を飛ばしてしまうと、家計全体のバランスは崩れやすくなる。

大事なのは「返せる時」ではなく、「返しても崩れない時」を見極めることだと思っている。

僕が将来、繰上げ返済を想定しているタイミング

では、将来的にいつ繰上げ返済をするのか。

今の僕の中でかなり明確にイメージしているのは、娘が大学を卒業するタイミングである

その頃になれば、娘にかかる大きな教育費はひと段落する。

住宅ローンの残債も今よりかなり減っているはずだ。

家計全体を見ても、今とは景色が変わっている可能性が高い。

娘の教育費が終わり、残る大きな教育費は息子の分が中心になる。

二人分を同時に強く意識する時期よりは、家計に少し余白が生まれやすい。

そのタイミングであれば、

  • 住宅ローン残高はかなり小さくなっている
  • 大きな教育費の山をひとつ越えている
  • 家計全体の見通しが立てやすい

という状態になっている可能性が高い。

僕にとっての繰上げ返済は、

「今すぐやるべきこと」ではなく、家族のライフイベントが一段落したあとに実行する可能性が高いプラン

という位置づけである。

投資と住宅ローン返済はどちらを優先するべきか。僕がS&P500との金利差を重視する理由

住宅ローンの繰上げ返済を考える時、どうしても出てくるのが

「返すのと投資するのと、どちらを優先するべきか」

というテーマだと思う。

僕もここはかなり考えた。

そして今のところ、僕の考えはかなりシンプルである。

僕の住宅ローン金利は約1.2%。この水準であれば、S&P500の長期的な期待リターンとの差はかなり大きく、現時点では投資の優先度の方が高い。

もちろん、これは「投資の方が絶対に正解」という話ではない。

ただ、数字の構造としては、そう考えるのが自然だと思っている。

S&P500の期待リターンと、住宅ローン金利1.2%の差は大きい

僕が投資判断の軸として見ているのは、やはりS&P500の長期リターンである。

S&P500は短期では大きく上下することがある。

年によっては大きく下がるし、数年単位で伸び悩むこともある。

ただ、長期で見れば、年率でおおむね7〜10%程度のリターン期待を前提に考える人が多いと思う。

一方で、僕の住宅ローン金利は**約1.2%**である。

この二つを単純に並べると、

  • 住宅ローン金利:約1.2%
  • S&P500の長期期待リターン:年7〜10%程度

という見方になる。

もちろん、投資は不確実であり、住宅ローン金利は確定している。

単純比較はできない。

ただ、それでもなお、利回り差はかなり大きい

感覚的には、住宅ローンを繰上げ返済して得られる“確実な1.2%”と、S&P500に長期で積み立てて狙う“より高い期待リターン”を比較したとき、今の僕は後者の魅力の方が大きいと感じている。

繰上げ返済は「確実な1.2%」、投資は「不確実だが高い期待リターン」

ここで大事なのは、両者の性質がまったく違うことだ。

住宅ローンの繰上げ返済は、

約1.2%の利回りで確実に運用したのと近い効果

がある。

これはかなり強い。

元本割れもないし、やった瞬間に残債が減る

精神的な安心感も大きい。

一方で、S&P500への投資は、期待リターンは高いが当然ながら不確実だ。

年によって成績は大きくぶれるし、元本割れする局面もある。

だから、単純に

10%期待できるから投資一択

というほど簡単な話ではない。

それでも、住宅ローン金利が約1.2%という低い水準で固定されているなら、僕の中ではやはり

まずは高い期待リターンを持つ資産への積立を維持する方が合理的

という結論になる。

僕が今、繰上げ返済より投資を優先する理由

僕が重視しているのは、まさにこの金利差である。

仮に住宅ローン金利が3%や4%なら、話はかなり変わる。

繰上げ返済の魅力はもっと大きくなるし、心理的にも無視しにくい。

でも、僕の住宅ローン金利は約1.2%だ。

この水準であれば、固定金利で返済額も安定している以上、急いで元本を減らすよりも、S&P500を中心とした長期積立を継続する方が、家計全体の期待値は高くなりやすいと考えている。

特に僕は、10年前の固定金利で借りており、足元の金利上昇を直接受けない立場でもある

だからなおさら、今この瞬間に繰上げ返済へ大きく資金を回す優先度は高くない。

今の僕にとって大事なのは、

  • 低い住宅ローン金利を活かすこと
  • 長期積立投資の時間を途切れさせないこと
  • 教育費に備えながら家計の柔軟性を保つこと

この3つである。

それでも投資だけに振り切らない理由

ただし、ここで誤解したくないのは、僕は

「住宅ローンはそのままで、全部投資に回せばいい」

と考えているわけではないということだ。

住宅ローンの繰上げ返済には、数字では測れない価値がある。

それが、確実性安心感だ。

S&P500の期待リターンは魅力的だが、将来は保証されていない。

一方で、繰上げ返済はやった瞬間に残債が減り、将来の利息負担も確実に軽くなる。

だから僕は、こう整理している。

  • 数字の合理性では投資が優位
  • 心理的な安定では繰上げ返済が優位

この二つはどちらも正しい。

だからこそ、家計の状況に応じて優先順位を決める必要がある。

我が家の結論は「約1.2%なら今は投資優先。繰上げ返済は将来の一手」

今の我が家では、

  • 住宅ローン金利は約1.2%と低い
  • 固定金利なので返済額は安定している
  • これから教育費の山が来る
  • 投資は長期で継続したい

という前提がある。

そのため、現時点では

住宅ローンを急いで繰上げ返済するより、S&P500を中心とした積立投資を維持する方が合理的

という結論になっている。

ただし、これは永久にそうという話ではない。

教育費のピークが見え、生活防衛資金にも十分な余力があり、家計全体の見通しが立ったタイミングでは、繰上げ返済は有力な選択肢になると思っている。

おわりに

長期金利も短期金利も上がり、住宅ローンを取り巻く環境は確実に変わり始めている。

そして我が家では、10年間の住宅ローン控除が昨年で終わった。

この二つが重なれば、繰上げ返済を意識するのは自然なことだと思う。

実際、僕もかなり真剣に考えた。

でも、今の結論は変わらない。

僕は固定金利で借りている以上、足元の金利上昇の影響を直接受けるわけではない。

だからこそ、今は繰上げ返済を急がず、教育費と家計の安全性を優先する。

ただし、将来的には繰上げ返済を明確にプランに入れている。

住宅ローン返済で大事なのは、

早く返すことそのものではない。

家計全体を見ながら、「返しても崩れないタイミング」を見極めることだと僕は思っている。

焦って安心を買いに行った結果、今の自由度を失ってしまっては意味がない。

未来の不安を消すために、今の安心を削りすぎない。

そのバランスを取りながら、これからも家族にとっての最適解を探していきたい。